床から20cmの目線へ下げる
人はドアノブや机の天板を見て歩きますが、床を走る機械が出会うのは椅子の脚、カーテンの裾、充電ケーブル、敷物の房です。リツの順番は短く三つ。「まず一周。次に止める。最後に一部屋」です。
準備するのはスマートフォン、巻尺、A4用紙、赤・黄・緑の筆記具。床へ機械を置かなくても調べられます。スマートフォンを床から約20cmへ下げ、玄関から時計回りに各部屋を一度だけ見ます。膝や腰に負担がある場合は、棒の先へカメラを固定するなど無理のない方法に替えてください。
20分で見る順路
部屋ごとに止まって精密測定すると時間が膨らみます。一周目は発見、二周目は必要な場所だけ測定に分けます。
| 時間 | 見る場所 | 記録するもの |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 玄関・廊下・部屋の入口 | 通路の最狭幅、段差、階段や落下端 |
| 5〜10分 | 家具の周囲と下 | 最低高、U字脚、カーテン、軽い椅子 |
| 10〜15分 | 床に置く物 | コード、房、食器、水、玩具、排泄場所 |
| 15〜20分 | 壁際と電源 | ドック候補、コンセント、帰還経路 |
数値は「製品が通れそう」ではなく、その家に実際にある幅・高さを書きます。候補機が決まったら、本体寸法、モップ装着時の条件、必要余白を取扱説明書と照合します。
危険は赤、止まりやすさは黄で分ける
階段や玄関の落下端、暖房器具、水、ベランダ、刃物、ペットの排泄場所は赤。コード、房、軽いマット、U字脚、低い家具は黄にします。赤は最初から進入禁止、黄は片づけるか、在宅の試運転で一つずつ確認する場所です。
段差は高さだけでなく、角の丸み、手前の敷物、越えた先に階段がないかも記録します。詳しい測り方は段差を高さだけで測らないガイドへ分けます。cliff sensorの能力を確かめるために、実際の階段端へ機械を走らせないでください。
危険と単なる詰まりを同じ色にすると、便利さのために赤条件まで解除しやすくなります。「傷や汚れで済む黄」と「人・動物・火・水・落下へつながる赤」を分けるのが、この一周の中心です。
間取りに時間を重ねる
同じ床でも、朝は子どもの鞄、夕方は玩具、夜はペットの食器が置かれます。紙の部屋名の横へ「床が空く時間」「人や動物が使う時間」を書き足します。無人時間だから安全と考えず、人や動物と確実に分けられ、異常時に戻れる時間を選びます。
家族が一時的に床へ置く物には、片づけ先を一つ決めます。毎回10分の準備が必要なら、その10分も導入後の家事です。見えないことにせず、試運転で戻った時間から引きます。
ナオの家なら、娘の工作、犬の水皿、充電コードを「散らかり」の一語へまとめません。工作は床を使う時間、水皿は進入させない場所、コードは戻す定位置という別の条件です。家族や犬をロボットの障害にするのではなく、機械が入ってよい時間と場所を狭めます。
一枚の家側仕様書にする
最後に、赤がなく黄が三つ以下の部屋を一つだけ緑で囲みます。ここが最初のテスト床です。赤区域への進入を物理的に止められるか、黄色い場所を一つずつ確認できるかも書きます。
ドック候補は平坦で開けた床に置き、階段から離し、前後左右の余白を機種ごとの説明書で確認します。公式案内に具体寸法があっても、別メーカーや別のドックへそのまま流用しません。設置の絞り込みはWi-Fiより帰還動線から置くガイドで行います。
完成した一枚には、寸法、赤、黄、緑、時間帯、ドック候補が残ります。製品に家を合わせる前に、候補製品がこの家側仕様に合うかを照合できる状態です。
一周の目的は、家をロボット向けに作り替えることではありません。最初の一仕事に必要な道だけを見つけ、毎晩の準備がナオの手入れ予算10分を超えるなら、範囲を狭めるか導入を戻す。その判断までできて、家側仕様書は完成です。